矯正歯科治療で失敗しないために知っておくべき名医の選び方
歯並びの悩みを解決するために矯正歯科を検討されている方は多いでしょう。東京都内には数多くの矯正歯科医院がありますが、どのように選べばよいのか迷ってしまうことも少なくありません。
矯正治療は一般的な歯科治療とは異なり、長期間にわたって通院する必要があります。また、治療費も決して安くはありません。だからこそ、信頼できる「名医」を選ぶことが非常に重要なのです。
本記事では、矯正歯科の名医を選ぶための7つの基準と、特に重要な「認定医」の意味について詳しく解説します。これから矯正治療を始める方はもちろん、現在治療中で転院を検討されている方にも役立つ情報をお届けします。
矯正歯科医を選ぶ際に確認すべき資格と専門性
矯正歯科医を選ぶ際、最も重要なポイントの一つが「資格」です。歯科医師であれば誰でも矯正治療を行うことができますが、専門的な知識と技術を持った医師を選ぶことで、より質の高い治療を受けることができます。
特に注目すべきは「日本矯正歯科学会認定医」という資格です。この認定医は、厳しい審査に合格した上で、矯正歯科において高い知識と技術を持っていると認められた医師です。
認定医の資格を取得するためには、歯科医師免許を有し、その後引き続き5年以上の学会会員であることが条件となります。さらに上位資格として「臨床指導医」があり、これは認定医取得後に10年以上の矯正治療臨床経験と、学会が指定した難症例の治療例を10症例提出し、一次審査、二次審査、三次審査を経て、技術・経験・人格が優れていると判断された場合に取得できる資格です。
このような資格を持つ医師は、矯正治療に関する深い知識と豊富な経験を持っているため、複雑なケースにも対応できる可能性が高いと言えるでしょう。
日本矯正歯科学会認定医の意義と重要性
日本矯正歯科学会認定医は、単なる肩書きではありません。この資格は、医師が矯正歯科治療において一定水準以上の知識と技術を持っていることを客観的に証明するものです。
認定医資格を持つ医師は、最新の矯正治療技術や研究成果に常にアクセスし、学会を通じて継続的に学んでいます。これにより、患者さんに対して科学的根拠に基づいた適切な治療を提供することが可能になります。
また、認定医は医療広告ガイドラインにも精通しており、患者さんに対して適切な情報提供を行う義務があります。2024年4月に日本矯正歯科学会が「ホームページ倫理審査指針」から「医療広告ガイドライン」に名称変更したことからも分かるように、医療情報の透明性と正確性はますます重要視されています。
認定医の資格は、更新制度があり、定期的に学会が定める基準を満たす必要があります。そのため、常に最新の知識と技術を維持していることが保証されているのです。
矯正治療は長期間にわたる治療であるため、途中で医師の知識や技術が不足していることが判明すると、治療計画の変更や治療期間の延長などが必要になる可能性があります。認定医を選ぶことで、そのようなリスクを減らすことができるでしょう。
東京都で矯正歯科の名医を選ぶ7つの基準
東京都内には多くの矯正歯科医院がありますが、本当の「名医」を見極めるためには、以下の7つの基準を参考にするとよいでしょう。
1. 日本矯正歯科学会の認定資格を持っているか
前述したように、日本矯正歯科学会の認定医や臨床指導医の資格は、医師の専門性を示す重要な指標です。医院のホームページや診察室に掲示されている資格を確認しましょう。
ただし、2024年4月からの医療広告ガイドラインでは、認定医等の記載に関する規制が厳しくなっています。経歴、略歴欄以外への掲載は認められず、また略歴、経歴欄であってもそれらを過度に強調したものは誇大広告や比較優良広告に該当するため掲載不可となっています。
2. 矯正治療の実績と経験が豊富か
医師の経験年数や治療実績は重要な判断材料です。ただし、「症例数6000件以上」のような長期間の件数を示す表現は誇大広告に該当するため、医療機関のホームページでは見かけなくなっています。代わりに、医師の経歴や在籍年数から経験の豊富さを判断することができます。
3. 治療方針や費用の説明が明確か
良い矯正歯科医は、治療計画や費用について明確に説明します。特に、2024年の医療広告ガイドラインでは、自由診療(保険適用外の治療)については、治療内容、費用、治療期間、通院回数、リスクや副作用について明確に説明することが義務付けられています。
例えば、「治療期間2~3年間、通院回数24~36回」といった具体的な情報や、「矯正歯科治療は公的健康保険の適用外の自費診療(自由診療)となります」という説明が必要です。
4. 矯正装置の選択肢が複数あるか
患者さんの状態や希望に合わせて、複数の矯正装置の選択肢を提案できる医院は信頼できます。表側矯正、裏側矯正、マウスピース矯正など、それぞれのメリット・デメリットを説明した上で、最適な方法を提案してくれる医師を選びましょう。
ただし、「プチ矯正」「キッズ矯正」「ティーンズ矯正」などの学術的ではない造語や、「比較的痛みの少ない」「治療期間の短い○○システム」といった表現は、誇大広告に該当するため注意が必要です。
5. 矯正治療中のトラブル対応が充実しているか
矯正治療中には、装置の一部が外れたり、痛みが生じたりするトラブルが発生することがあります。そのような場合に迅速に対応してくれる医院を選ぶことが重要です。
特に、歯科医師が常勤している医院や、矯正治療に精通した歯科衛生士やスタッフが在籍している医院は安心です。また、急患対応の有無や、休診日の対応についても事前に確認しておくとよいでしょう。
6. 口腔内全体の健康を考慮した治療計画を立てるか
矯正治療は歯並びを整えるだけでなく、噛み合わせや顎関節の機能、さらには全身の健康にも影響します。単に見た目を良くするだけでなく、機能面も考慮した総合的な治療計画を立ててくれる医師を選ぶことが大切です。
初診時のカウンセリングで、単に歯並びだけでなく、咬合(噛み合わせ)や顎関節の状態、口腔内全体の健康状態についても詳しく診査・診断してくれる医師は信頼できるでしょう。
7. 治療後のアフターケアが充実しているか
矯正治療は装置を外した後も、保定装置の装着や定期的なメンテナンスが必要です。治療終了後のアフターケアについても明確に説明してくれる医院を選ぶことが重要です。
特に、保定期間中の通院頻度や費用、保定装置の種類や使用期間についても事前に確認しておくとよいでしょう。また、治療後に何か問題が生じた場合の対応についても聞いておくと安心です。
医療広告ガイドラインと矯正歯科の選び方の関係
2024年4月に日本矯正歯科学会は「ホームページ倫理審査指針」から「医療広告ガイドライン」に名称を変更しました。これは医療法の一部であり、違反すると行政指導や行政処分の対象となる重要なものです。
このガイドラインの主なポイントは、医療広告規制の対象拡大(ホームページ、メルマガ、患者の求めに応じて送付するパンフレット等も広告規制の対象)と広告可能事項の限定解除(一定要件を満たせば記載できる事項の限定を緩和)の2点です。
矯正歯科を選ぶ際には、このガイドラインを遵守している医院かどうかも一つの判断材料になります。ガイドラインに沿った適切な情報提供を行っている医院は、患者さんに対して誠実であり、法令遵守の意識が高いと言えるでしょう。
具体的には、以下のような点に注目するとよいでしょう:
- 治療費、治療期間、通院回数が明確に記載されているか
- 「矯正歯科治療は公的健康保険の適用外の自費診療(自由診療)となります」という説明があるか
- 治療のリスクや副作用について適切に説明されているか
- 治療前後の写真を掲載する場合、主訴、診断名、年齢、使用装置、抜歯部位、治療期間、治療費概算、リスクと副作用の8項目すべてが記載されているか
- 「最新」「最先端」「最良」などの誇大表現や、「プチ矯正」「ブライダル矯正」などの学術的でない造語が使われていないか
これらの点に配慮している医院は、医療広告ガイドラインを理解し、患者さんに対して適切な情報提供を心がけていると言えるでしょう。
矯正認定医による治療のメリット
矯正認定医による治療には、多くのメリットがあります。ここでは、特に重要なポイントについて解説します。
科学的根拠に基づいた治療計画
矯正認定医は、最新の研究成果や科学的根拠に基づいた治療計画を立てることができます。これにより、効率的かつ効果的な治療が可能になります。
例えば、どのような症例にどの矯正装置が適しているか、どのようなタイミングで治療を開始するのが最適か、といった判断を適切に行うことができます。
複雑なケースへの対応力
顎変形症や口蓋裂など、複雑な症例に対しても適切に対応できるのが認定医の強みです。必要に応じて他の専門医と連携し、総合的な治療計画を立てることができます。
特に、外科的矯正治療(顎矯正手術を併用する治療)が必要なケースでは、認定医の知識と経験が非常に重要になります。
トラブル発生時の適切な対応
矯正治療中には、予期せぬトラブルが発生することもあります。歯の動きが予想通りでない、痛みや不快感が続く、装置が破損するなど、様々な問題に対して、認定医は豊富な知識と経験に基づいて適切に対応することができます。
また、治療計画の修正が必要になった場合も、科学的根拠に基づいた判断ができるため、患者さんにとって最善の選択を提案することが可能です。
最新の治療技術へのアクセス
認定医は学会活動を通じて常に最新の治療技術や研究成果にアクセスしています。そのため、より効率的で快適な治療方法を提供できる可能性が高いと言えるでしょう。
例えば、デジタル技術を活用した診断や治療計画の立案、3Dプリンターを用いた矯正装置の製作など、最新技術を取り入れた治療が受けられる可能性があります。
矯正歯科治療における患者さんの心構えと注意点
最後に、矯正歯科治療を受ける際の患者さんの心構えと注意点について解説します。
治療前の十分な情報収集
矯正治療は長期間にわたる治療であるため、事前に十分な情報収集を行うことが重要です。複数の医院でセカンドオピニオンを求めることも検討しましょう。
また、治療方法や費用、治療期間、通院頻度、リスクや副作用などについて、事前に詳しく説明を受け、理解しておくことが大切です。
治療中の口腔衛生管理
矯正装置を装着すると、通常よりも丁寧な歯磨きが必要になります。医師や歯科衛生士の指導に従い、適切な口腔衛生管理を行いましょう。
特に、矯正装置の周囲は食べかすが溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。専用の歯ブラシやデンタルフロス、洗口液などを使用し、毎日のケアを怠らないようにしましょう。
定期的な通院の重要性
矯正治療は定期的な通院が必要です。予約した日時には必ず来院し、医師の指示に従うことが治療成功の鍵となります。
やむを得ず予約をキャンセルする場合は、早めに医院に連絡し、次の予約を取り直すようにしましょう。長期間通院しないと、治療の進行に影響が出る可能性があります。
治療後の保定期間の重要性
矯正装置を外した後も、歯が元の位置に戻ろうとする力が働くため、保定装置の装着が必要です。医師の指示に従い、適切に保定装置を使用しましょう。
保定期間を怠ると、せっかく整えた歯並びが元に戻ってしまう可能性があります。保定装置の使用方法や期間について、医師の説明をよく理解しておくことが大切です。
まとめ:信頼できる矯正歯科医を選んで理想の歯並びを手に入れよう
矯正歯科治療は、見た目の改善だけでなく、咬み合わせの機能改善や口腔内の健康維持にも大きく貢献します。そのため、信頼できる「名医」を選ぶことが非常に重要です。
特に、日本矯正歯科学会の認定医や臨床指導医の資格を持つ医師は、高い専門性と豊富な経験を持っていることが期待できます。また、2024年4月に改定された医療広告ガイドラインを遵守している医院は、患者さんに対して誠実で透明性の高い情報提供を行っていると言えるでしょう。
東京都内には多くの矯正歯科医院がありますが、本記事で紹介した7つの基準を参考に、ご自身に合った医院を選んでいただければ幸いです。適切な医師との出会いが、理想の歯並びへの第一歩となることを願っています。
矯正治療は決して短期間で終わるものではありませんが、信頼できる医師のもとで適切な治療を受けることで、将来にわたって健康的で美しい笑顔を手に入れることができるでしょう。

監修ドクター:冨田 大介
略歴
大阪歯科大学卒業
東京歯科大学勤務(研修医)
昭和大学歯科矯正学講座 入局
昭和大学大学院 博士号取得
昭和大学歯科病院 助教(歯科)
都内複数一般歯科医院にて
矯正科担当医として勤務
白金高輪矯正歯科 副院長
医療法人社団因幡会 矯正科医局長
資格
日本矯正歯科学会 認定医
歯学博士
所属学会
日本矯正歯科学会
アメリカ矯正歯科学会
日本顎変形症学会
日本口蓋裂学会
日本スポーツ歯科医学会