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神経を抜いた歯が複数あっても矯正はできる?

コラム

「神経を抜いた歯が何本もあるから、矯正はもう無理ですよね」——カウンセリングでよく聞く言葉です。

実は、神経を抜いた歯(失活歯)も、条件がそろえば矯正で動かすことができます。歯を動かす力は歯の神経ではなく、歯根のまわりにある歯根膜という組織が受け止めているためです。

ただし、生きている歯とまったく同じように扱えるわけではありません。事前に確認しておきたい点や、治療中に気をつけるポイントがいくつかあります。

この記事では、神経を抜いた歯が複数ある方が矯正を考えるときに知っておきたいことを整理します。

神経を抜いた歯でも動くのはなぜか

歯は骨に直接くっついているわけではなく、歯根と骨のあいだに「歯根膜」という薄いクッションのような組織があります。矯正で歯が動くのは、この歯根膜が力を受け取り、骨の吸収と再生が起こるからです。

神経を抜く治療(根管治療)で取り除かれるのは、歯の内部にある神経と血管です。歯根膜は歯の外側にある組織なので、根管治療をしても残っています。つまり、歯を動かす仕組みそのものは失われていません。

矯正歯科の現場でも、失活歯を含めた矯正は日常的に行われています。神経を抜いた歯が1本だけの方もいれば、奥歯を中心に4〜5本という方もいますが、本数が多いから自動的に不可、という判断にはなりません。

ただし「同じ」ではない点もある

  • 失活歯は内部の水分や有機質が減り、生きている歯より割れやすい傾向があります
  • 被せ物(クラウン)が入っていると、ブラケットの接着方法を変える必要があります
  • 神経がないため、力がかかったときの痛みや違和感を感じにくい場合があります

感じにくいというのは一見メリットのようですが、異変に気づく手がかりが減るということでもあります。だからこそ、定期的なチェックと画像での確認が大切になります。

矯正前に確認しておきたい3つのこと

1. 根管治療が落ち着いているか

根の先に炎症(根尖病巣)が残っていると、矯正の力がかかったときに症状が出てくることがあります。程度はさまざまで、レントゲンでわずかな影が見えるだけで自覚症状がない方もいれば、痛みや腫れが出て根管治療のやり直しが必要になる方もいます。

矯正を始める前にレントゲンやCTで根の状態を確認し、必要があれば先に治療を整えてから動かし始めるのが一般的な流れです。

2. 歯根の長さと形

矯正では、歯根の先がわずかに短くなる「歯根吸収」が起こることがあります。これは神経の有無にかかわらず起こりうる現象で、多くはごく軽度でレントゲンでようやくわかる程度です。一方で、もともと歯根が短い方や特定の形の歯では、吸収が大きくなり、動かす量や期間の計画を見直すケースもあります。

失活歯が歯根吸収を起こしやすいかどうかについては、現在の研究では見解が一致していません。ただ、根管治療の際に歯根の内部が加工されている歯もあるため、治療前に一本ずつ長さと形を確認しておく意味は大きいと考えています。

3. 被せ物・土台の状態

神経を抜いた歯には、金属やセラミックの被せ物、内部に土台(コア)が入っていることが多くあります。

  • 被せ物の材質によって、ブラケットの接着力が弱くなることがある
  • 矯正後に歯の位置が変わると、被せ物の形が合わなくなり作り替えを検討する場合がある
  • 土台と歯根の境目に問題があると、動かす途中で歯が割れるリスクが高まる

矯正後に補綴治療(被せ物のやり直し)を予定しているなら、その順番も含めて最初に相談しておくと無駄が少なくなります。

精密検査で専門医が見ているポイント

神経を抜いた歯が複数ある方の場合、通常の矯正の検査に加えて、失活歯そのものの「土台としての強さ」を確認します。

  • 歯根の長さ・太さ・湾曲の有無(CTで立体的に確認)
  • 根管に詰められた材料が根の先まで届いているか
  • 根の先の骨に影がないか、あれば大きさと変化
  • 歯を支える骨の厚み(特に前歯を大きく動かす計画のとき)
  • 過去に歯根が破折した形跡がないか

そのうえで、「この歯を大きく動かす計画にするか、それとも動かす量を抑えて周囲の歯で調整するか」を組み立てていきます。矯正歯科専門のクリニックでは、こうした個々の歯の条件を治療計画そのものに反映させます。

治療中も見守り続ける

装置がついてからも、一定期間ごとにレントゲンで歯根の状態を確認します。歯根吸収の兆候が見えた場合は、力を弱める、いったん休止期間を置く、目標とする歯の位置を修正するなど、途中で計画を調整することがあります。

また、失活歯は歯の色が少しずつ暗くなることがあります。矯正が終わったあとにホワイトニングや被せ物で色を整えたいという希望がある方は、その工程も含めて全体のスケジュールを考えておくとスムーズです。

神経を抜いた歯があること自体は、矯正を諦める理由にはなりません。ただ、「動かせるかどうか」ではなく「どう動かすか」を丁寧に設計する必要がある、という点は生きた歯だけの場合と異なります。

まとめ

神経を抜いた歯も歯根膜は残っているため、矯正で動かすことは可能です。本数が多いからといって、それだけで治療をあきらめる必要はありません。

一方で、根の先の炎症、歯根の長さ、被せ物や土台の状態によっては、動かす量や順番を調整したほうがよいケースもあります。判断の材料になるのはレントゲンやCTによる精密検査です。

ご自身の歯がどの状態にあたるのかは、口の中を見ただけではわかりません。過去の治療歴を整理して相談に持っていくと、話がスムーズに進みます。

この記事だけでは判断が難しい部分は、検査を踏まえた無料相談でご説明しています。

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執筆:アイコネクトの衛生士チーム/監修:院長 冨田 大介(矯正歯科認定医)

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著者紹介

歯学博士 院長

院長 冨田 大介(歯学博士)

現在、矯正治療を受診する方法の多様化が進んでいます。幅広い矯正治療方法の中から歯並びや患者様のご希望に合わせた治療法を選択しご提供できるのが、矯正治療を専門の医師医師ならではの特徴です。 当院では、矯正歯科治療を専門に行う歯科医師が、各分野専門の医師の在籍する一般歯科と連携し、矯正治療を行います。

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