矯正歯科治療で失敗・後悔しないために知っておくべきこと
「歯並びを治したいけれど、矯正治療は高額だし長期間かかるから失敗したくない…」
このような不安を抱えている方は少なくありません。矯正歯科治療は、見た目の改善だけでなく、噛み合わせの改善や口腔内環境の向上など、多くのメリットがある一方で、治療費用や期間、そして医院選びによって結果が大きく左右されます。
矯正治療は一般的に1〜3年程度の長期間を要し、費用も数十万円から百万円を超える場合もあります。これだけの時間とお金をかける治療だからこそ、後悔のない選択をしたいものです。
矯正歯科医院を選ぶ際の5つの重要ポイント
矯正歯科医院選びで最も重要なのは、信頼できる専門医を見つけることです。以下の5つのポイントを確認することで、後悔のない医院選びができるでしょう。
1. 矯正の専門資格を持つ歯科医師がいるか
矯正歯科治療は、歯科医師免許があれば誰でも行うことができます。しかし、専門的な知識と技術が必要な治療であるため、日本矯正歯科学会の認定医や臨床指導医(旧専門医)などの資格を持つ歯科医師を選ぶことが重要です。
日本矯正歯科学会の認定医は、歯科医師全体の約2.5%程度と言われており、厳しい審査基準をクリアした歯科医師のみが取得できる資格です。認定医になるためには、5年以上の臨床研修や症例審査などの厳しい条件をクリアする必要があります。
2. カウンセリングで治療内容や費用の説明が丁寧か
良い矯正歯科医院では、初回のカウンセリングで治療内容や費用について丁寧に説明してくれます。治療期間、通院回数、装置の種類、メリット・デメリット、そして費用の内訳まで、分かりやすく説明してくれる医院を選びましょう。
特に重要なのは、治療費の総額と追加費用の有無です。矯正治療は長期間にわたるため、途中で予想外の費用が発生すると大きな負担になります。治療費が総額制なのか、それとも追加料金が発生する可能性があるのかを必ず確認しましょう。
3. 治療後のイメージを明確に提示してくれるか
優れた矯正歯科医院では、3Dシミュレーションや口腔内スキャナーを使って、治療後の歯並びのイメージを具体的に見せてくれます。治療前に完成形のイメージを共有することで、患者と医師の間で認識のズレを防ぎ、満足度の高い治療結果につながります。
治療計画を立てる際には、単に歯並びを整えるだけでなく、顔全体のバランスや噛み合わせの機能も考慮した総合的な提案をしてくれる医院が理想的です。
4. 矯正治療のリスクや副作用についても説明があるか
矯正治療には、痛みや不快感、歯根吸収、歯肉退縮などのリスクや副作用があります。これらについて隠さずに説明してくれる医院は、誠実で信頼できると言えるでしょう。
特に、自分の症例に対する具体的なリスクや注意点を説明してくれる医院を選ぶことが重要です。メリットだけを強調し、デメリットやリスクについて触れない医院は避けた方が無難です。
5. アフターケアや保定期間のサポート体制が整っているか
矯正治療は装置を外した後も、歯が元の位置に戻らないように「保定」という期間が必要です。この保定期間のサポート体制が整っている医院を選ぶことが、長期的な治療成功のカギとなります。
保定装置の種類や使用期間、メンテナンスの頻度など、治療後のケアについても詳しく説明してくれる医院を選びましょう。
矯正歯科治療でよくある失敗事例と対策
矯正治療で後悔しないためには、どのような失敗事例があるのかを知っておくことも重要です。ここでは、実際によくある失敗事例とその対策について解説します。
1. 治療期間が予想より長引くケース
矯正治療では、当初の予定よりも治療期間が長引くことがあります。これは歯の動きが個人差によって異なるためで、完全に予測することは難しいのです。
特に大人の矯正では、子どもに比べて歯が動きにくいため、治療期間が長くなる傾向があります。また、治療中の装置の装着時間が不十分だったり、定期的な通院を怠ったりすると、さらに期間が延びてしまいます。
対策としては、治療前に医師から提示された期間はあくまで目安であることを理解し、余裕を持った計画を立てることが大切です。また、装置の装着指示を守り、定期的な通院を欠かさないようにしましょう。
2. 治療費が想定以上にかかるケース
矯正治療では、途中で追加費用が発生することがあります。特に、回数制の料金システムを採用している医院では、治療期間が延びると総額も増えてしまいます。
また、治療中に装置が破損した場合や、追加の処置が必要になった場合にも費用が発生することがあります。
これを避けるためには、初回のカウンセリングで料金システムについて詳しく確認しておくことが重要です。総額制(トータルフィー)の料金システムを採用している医院であれば、治療期間が延びても追加費用は発生しません。また、装置の破損や紛失時の費用についても事前に確認しておきましょう。
3. 歯根吸収や歯肉退縮などの副作用が起きるケース
矯正治療では、歯に力をかけて動かすため、歯根吸収(歯の根が短くなる現象)や歯肉退縮(歯ぐきが下がる現象)などの副作用が起こることがあります。
これらの副作用は、適切な力で歯を動かさなかったり、歯の動かし方に問題があったりすると発生リスクが高まります。特に、インターネットで購入できる安価なマウスピース矯正などでは、専門医の管理下にないため、こうしたリスクが高まる可能性があります。
対策としては、日本矯正歯科学会の認定医など、専門的な知識と技術を持つ歯科医師に治療を依頼することが重要です。また、定期的な検診で歯の状態をチェックしてもらい、異常があれば早めに対処することも大切です。
4. 治療後に歯並びが後戻りするケース
矯正治療後、保定装置の使用を怠ると、せっかく整えた歯並びが元に戻ってしまうことがあります。これを「後戻り」と呼びます。
歯は周囲の筋肉や舌の力の影響を受けやすく、矯正で動かした後も元の位置に戻ろうとする性質があります。そのため、保定装置を適切に使用して歯の位置を安定させる必要があるのです。
後戻りを防ぐためには、医師の指示通りに保定装置を使用することが最も重要です。保定期間は個人差がありますが、一般的には2〜3年程度、場合によってはそれ以上の期間が必要になることもあります。
5. 噛み合わせが悪化するケース
見た目の改善だけを重視した治療を行うと、噛み合わせが悪化してしまうことがあります。矯正治療の目的は、見た目の改善だけでなく、機能的な噛み合わせを実現することも含まれています。
噛み合わせが悪いと、顎関節症や頭痛、肩こりなどの症状を引き起こす可能性があります。また、噛み合わせが悪いと歯に過度な負担がかかり、将来的に歯の損傷や歯周病のリスクが高まることもあります。
これを避けるためには、見た目だけでなく機能面も重視した総合的な治療計画を立ててくれる医院を選ぶことが重要です。治療前のカウンセリングで、噛み合わせについてどのように考慮しているかを確認しましょう。
医療広告ガイドラインと矯正歯科の選び方
矯正歯科医院を選ぶ際には、医療広告ガイドラインについても知っておくと役立ちます。2024年4月に日本矯正歯科学会は「ホームページ倫理審査指針」から「医療広告ガイドライン」に名称を変更し、内容も更新されました。
このガイドラインは、矯正歯科医療に従事する医師が運営するウェブサイトの広告内容について規制するもので、患者が適切な情報を得るための基準となっています。
医療広告ガイドラインのポイント
医療広告ガイドラインでは、医療広告規制の対象がホームページやメルマガなどにも拡大され、広告可能事項の限定解除(一定要件を満たせば記載できる事項の限定を緩和)という2つの大きなポイントがあります。
特に注目すべきは、広告可能事項の限定解除要件です。これは以下の4つの条件をすべて満たした場合にのみ、通常は広告できない事項(学会認定資格や治療装置の名称など)を掲載できるというものです。
- ウェブサイトおよびこれに準じる広告であること
- 患者等が容易に照会できるように問い合わせ先を記載すること
- 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること
- 自由診療に係る治療等に係る「矯正歯科治療における一般的なリスク、副作用」等に関する事項について情報を提供すること
つまり、矯正歯科医院のウェブサイトでは、治療内容や費用、リスクや副作用について適切に情報提供していることが求められているのです。
医療広告ガイドラインを活用した医院選び
このガイドラインを知っておくことで、矯正歯科医院のウェブサイトを見る際のチェックポイントが明確になります。例えば、以下のような点に注目してみましょう。
- 治療費用が明確に記載されているか
- 治療期間や通院回数の目安が示されているか
- 矯正治療のリスクや副作用について説明があるか
- 「最新」「最先端」「最良」などの誇大表現を使っていないか
- 治療前後の写真に適切な説明が付されているか
これらの点がきちんと守られているウェブサイトを持つ医院は、医療倫理に対する意識が高く、患者に対して誠実な姿勢を持っていると考えられます。
特に、日本矯正歯科学会の認定医や臨床指導医(旧専門医)の資格を持つ歯科医師が在籍する医院では、このガイドラインを遵守することが資格の更新条件となっているため、より信頼性が高いと言えるでしょう。
矯正歯科治療の種類と選び方
矯正歯科治療には様々な種類があり、それぞれに特徴やメリット・デメリットがあります。自分に合った治療法を選ぶことも、後悔しないための重要なポイントです。
1. ワイヤー矯正(マルチブラケット法)
最も一般的な矯正方法で、歯に装着するブラケットとワイヤーを使って歯を動かします。見た目は目立ちますが、複雑な歯の動きにも対応できる治療法です。
ワイヤー矯正には、表側矯正と裏側矯正(リンガルブラケット矯正法)があります。裏側矯正は歯の裏側に装置を付けるため目立ちませんが、費用が高くなる傾向があります。
ワイヤー矯正は、どんな症例にも対応できる万能な治療法ですが、装置が目立つこと、食事制限があること、装置によって口内炎ができやすいことなどのデメリットもあります。
2. マウスピース型矯正装置
透明なマウスピースを使って歯を動かす矯正方法です。取り外しができるため、食事や歯磨きの際に不便がなく、見た目も目立ちません。
ただし、複雑な症例には不向きな場合があり、患者自身の装着時間の遵守が治療成功の鍵となります。1日20時間以上の装着が必要とされており、自己管理能力が求められます。
また、マウスピース型矯正装置の中には、インビザラインのような海外技工物もあります。これらは薬機法未承認医薬品であるため、医療広告ガイドラインでは特定の情報提供が求められています。
3. 小児矯正(子どもの矯正)
子どもの成長期を利用して顎の発育を促す矯正治療です。一般的に第一期治療(顎の発育を促す治療)と第二期治療(歯並びを整える治療)の2段階で行われます。
小児矯正のメリットは、顎の骨格的な問題に対応できることや、将来的に抜歯の必要性を減らせる可能性があることです。一方で、治療期間が長くなることや、子ども自身の協力が必要なことがデメリットとなります。
小児矯正を検討する場合は、成長発育に関する専門知識を持つ矯正歯科医に相談することが重要です。
自分に合った矯正方法の選び方
矯正方法を選ぶ際には、以下のポイントを考慮すると良いでしょう。
- 症例の複雑さ(どの治療法が適応できるか)
- 見た目の重視度(目立たない装置を希望するか)
- 費用(予算に合った治療法か)
- 治療期間(どのくらいの期間なら許容できるか)
- 生活スタイル(食事制限や装置の管理が可能か)
これらのポイントについて、カウンセリングで歯科医師としっかり相談し、自分に最適な治療法を選びましょう。
矯正歯科治療を成功させるための患者側の心構え
矯正治療の成功には、歯科医師の技術だけでなく、患者自身の協力も不可欠です。ここでは、治療を成功させるための心構えについて解説します。
1. 長期的な視点を持つ
矯正治療は短期間で結果が出るものではありません。1〜3年という長い期間をかけて、少しずつ歯を動かしていくものです。そのため、すぐに結果を求めるのではなく、長期的な視点を持って治療に臨むことが大切です。
治療の途中で「思ったより時間がかかる」と焦ってしまうこともあるかもしれませんが、焦らず医師の指示に従って治療を続けることが、最終的に良い結果につながります。
2. 医師の指示を守る
矯正装置の装着時間や、食事制限、口腔ケアの方法など、医師からの指示をしっかり守ることが治療成功の鍵です。特にマウスピース型矯正装置は、患者自身が管理する部分が大きいため、指示通りの装着時間を守ることが重要です。
また、定期的な通院も欠かさないようにしましょう。通院の間隔が空きすぎると、治療の進行に影響が出ることがあります。
3. 口腔ケアを徹底する
矯正治療中は装置があることで歯磨きがしづらくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まります。特にワイヤー矯正では、ブラケットの周りに食べ物が詰まりやすくなるため、丁寧な歯磨きが必要です。
歯間ブラシやデンタルフロス、水流式口腔洗浄器などを活用し、装置の周りもしっかり清掃しましょう。また、定期的な歯科衛生士によるクリーニングも受けることをおすすめします。
4. 保定期間も重視する
矯正装置を外した後の「保定期間」も治療の重要な一部です。この期間に保定装置をきちんと使用しないと、せっかく整えた歯並びが元に戻ってしまう「後戻り」が起こる可能性があります。
保定装置の使用期間や方法は医師の指示に従い、定期的な検診も欠かさないようにしましょう。保定期間は個人差がありますが、一般的には2〜3年程度、場合によってはそれ以上の期間が必要になることもあります。
5. 疑問や不安は遠慮なく相談する
治療中に疑問や不安が生じたら、遠慮せず医師に相談しましょう。「こんなことを聞いても大丈夫かな」と思うようなことでも、医師にとっては患者さんの状態を知る重要な情報になります。
また、痛みや違和感が強い場合も、我慢せずに伝えることが大切です。適切な対応をしてもらえれば、快適に治療を続けることができます。
まとめ:矯正歯科で後悔しないための選び方
矯正歯科治療で後悔しないためには、信頼できる専門医を見つけ、自分に合った治療法を選び、患者としての責任も果たすことが重要です。
医院選びでは、日本矯正歯科学会の認定医や臨床指導医(旧専門医)などの専門資格を持つ歯科医師を選ぶこと、カウンセリングで治療内容や費用について丁寧な説明があること、治療後のイメージを明確に提示してくれること、リスクや副作用についても説明があること、アフターケアや保定期間のサポート体制が整っていることを確認しましょう。
また、医療広告ガイドラインを知っておくことで、医院のウェブサイトから信頼性の高い医院を見分けることもできます。治療費用や期間、リスクなどが明確に記載されているウェブサイトを持つ医院は、患者に対して誠実な姿勢を持っていると考えられます。
矯正治療は長期間にわたる治療ですが、適切な医院選びと患者自身の協力によって、美しい歯並びと健康的な噛み合わせを手に入れることができます。この記事が、皆さんの矯正歯科選びの参考になれば幸いです。

監修ドクター:冨田 大介
略歴
大阪歯科大学卒業
東京歯科大学勤務(研修医)
昭和大学歯科矯正学講座 入局
昭和大学大学院 博士号取得
昭和大学歯科病院 助教(歯科)
都内複数一般歯科医院にて
矯正科担当医として勤務
白金高輪矯正歯科 副院長
医療法人社団因幡会 矯正科医局長
資格
日本矯正歯科学会 認定医
歯学博士
所属学会
日本矯正歯科学会
アメリカ矯正歯科学会
日本顎変形症学会
日本口蓋裂学会
日本スポーツ歯科医学会